~国内外の望遠鏡を連携(光・赤外線天文学大学間連携)した観測により爆発前の星の正体をとらえた~

前田啓一 本研究科物理学・宇宙物理学専攻准教授、山中雅之 甲南大学理工学部研究員らの研究グループは、理論的に予測されていた限界の明るさを超えて輝く「限界を超えたIa型超新星」を詳細に観測しました。この観測の結果、強い近赤外線が放射されていることを発見しました。起源天体が爆発前に周囲に放出した物質が超新星からの光を受けて輝いている現象であると結論づけられ、このことは白色矮星と通常の恒星からなる連星が「限界を超えた超新星」の起源天体であることの史上初めての証拠となります。

 

本研究成果は2016年5月18日、日本天文学会の学術誌「Publication of the Astronomical Society of Japan」オンライン版に掲載されました。

研究者からのコメント

前田准教授

2013年に京都大学に異動してすぐに近赤外線観測を用いて爆発する星の起源に迫るという手法を思いつきました。この物理過程を定式化して通常のIa型超新星の観測データに適用してみましたが、既存のデータの中には予想されるような近赤外放射は検出できませんでした。この制限は非常に意味のあるものですが、それでも予測されたような放射が見えないというのはなかなかつまらない。ややモチベーションが下がりつつあった時に、本研究の筆頭著者である山中氏が当時解析をはじめていた「限界を超えた超新星」SN2012dnがまさに予想されたような特徴の近赤外線放射を伴っていることに気がつきました。一度発見された天体現象というのは、どのような観測をすれば検出できるかがわかるので、急激に観測例が増えるという傾向があります。今後多数の「限界を超えたタイプの超新星」で同様の近赤外線放射が検出され、また通常のIa型でもより効率的な探査ができるでしょう。これにより、私たちは超新星の正体に迫る強力な新手法を持ったことになります。

本研究成果のポイント

  • 非常に明るい『限界を超えたIa型超新星』の起源は謎であった。
  • 『限界を超えた超新星』SN 2012dnから強い赤外線が放射されていることが発見された。
  • これにより、起源天体が白色矮星と通常の星からなる連星系である証拠を史上初めて突き止めた。
 

概要

Ia型超新星爆発へ至るシナリオとしては、通常の恒星から白色矮星への質量降着によって、限界質量に到達し爆発に至る説(降着説)が有力でした。しかしながら、限界質量を超えた白色矮星の爆発でなければ説明が困難な特異な超新星爆発(以降、「限界を超えた超新星」)が近年になり数例発見されました。このような「限界を超えた超新星」は従来の標準的な降着説では説明が困難です。果たして爆発起源の正体は何なのか、その解決が待たれていました。

 

今回の研究では、これまでIa型超新星では検出されていなかった強い赤外線放射を観測・解析し、爆発前の天体からの放出物起源であることを突き止めました。「限界を超えた超新星」の起源が通常の恒星から白色矮星への降着によることを明らかにした史上初めての研究成果であり、多様な分野へのインパクトが期待されます。

図:広島大学1.5m かなた望遠鏡で取得された超新星爆発SN 2012dn の星の画像

画像中央にSN 2012dnが見えています。また、超新星の存在している母銀河ESO 462-016が左側に見えています。この銀河までの距離は、1億3000万光年と知られています。超新星はただの点源で、膨張で広がっていく姿を捉えることはできませんが、明るさや色などの変化を追うことが可能です。
 

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